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武蔵野稽古会傳 作法 細論 其之五


礼法 一

刀の持ち様

刀は本身であれ模擬刀であれ、道場以外の場所では移動中を含め「すぐに抜くことが出来ない」状態であることが大原則です。

基本的には刀袋で包み、刀ケースに収めて持ち運びします。
刀ケースは、知っている人から見れば中身は一目瞭然ですが、しっかりしまってあると判る事が重要です。
抜く意思が無いことを示すために、抜き手である右肩で刀ケースを背負うようしている道場もあると聞きます。
当会ではそこまで細かく決めておりませんが、少なくとも刀と判る状態での持ち歩きは避ける事としています。
模擬刀であれ、木剣であれ、たとえ重要刀剣指定の高価な美術品であれ、刀が日常ではない一般の方々にとって、刀は凶器であり恐怖の対象です。
杓子定規ではなく、他者への心遣いを以て礼儀とします。

また、本身の場合は法律上、銃砲刀剣類登録証は必携です。
あくまで刀剣は美術品として所持を認められている事を忘れてはなりません。

道場内では自他の刀を跨がないことは論外の当然として、壁際など他者の邪魔にならない位置に置く気配りが必要です。
刀に限らず刃物の一般的な礼儀として、刃を他者へ向けない取扱い、受け渡しを心掛けます。

道場内で刀を持ち移動する際は、基本的に左手で刃を上に、鯉口寄りの鞘を持ち、親指を必ず鍔に掛けておきます。
この親指は、鯉口が弛んだ刀が鞘走りするのを防ぐ為であり、拳銃で云う安全装置を掛けている状態として、安全意識の有無を計る見所でもあります。
その実、何時でも鯉口を切る事が出来るという、引鉄に指を掛けた状態でもあります。

余談ですが、鯉口が弛んだ刀、切羽が弛んで鍔鳴りする刀などは、安全以前に表道具の手入れが出来ていない未熟者とみなされるものです。
時代劇などで納刀時に鍔がチンと鳴っているのは、本来であれば手入れの出来ていない未熟者、鞘から抜き差しする際にしゃりんしゃりんと派手な擦過音がするのは、手之裡が出来ていない未熟者です。

閑話休題、さらに古傳の大小詰、大小立詰にあるように、仕物を仕掛けられる場合はまず、一人目が刀を抜かせじと掛かってきます。
後ろから我が鐺を前に押し込む、横合いから我が鞘尻と柄を掴み体ごと引き付ける、我が柄を正面から押さえる、さらにそこから我が刀を抜き盗る等仕掛けてくるので、我はこれを捌いて抜刀まで持ち込みます。
掴まれた柄を振り解いたり、我が柄を遣い柔を掛けたりするのですが、この時、業の掛かりに肝心なのが鍔へ親指を掛ける事で、鍔への指掛けは古傳の見地からも重要な所作と云えます。


无拍
2022年9月25日 初出
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