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武蔵野稽古会傳 作法 細論 其之十


礼法 六

刀礼、帯刀

三礼の最後、刀礼を行います。

神前の拝礼後着座し、左手の刀を座礼に同じく右手に持ち替えます。
右手で持った刀の鐺を、膝から前方一尺程、右膝の右斜め前に着き、鐺を軸として柄頭を左へ寝かせ、静かに我が正面へ横たえます。
この時、鍔が左膝外の線に来るようにし、刃は自分を向いています。

刀が床に安定したら右手に下緒を持ったまま鞘から手を離し、下緒を刀の棟側に沿わせて延します。
鐺まで来たら刃側に折返し、端まで鞘に沿わせたら右手を太腿へ戻し、姿勢を正します。

座礼と同じ要領で刀に対する礼を行い、直ります。
右手の親指と中指で、下緒の端から三分の一の処を、端側が手の内側になるように摘まみます。
座礼と同じく人差し指を差裏側の鍔に掛け鞘を握り、鐺を床に着けたまま刀を起こします。
この時、下緒は右手の中指から小指を廻って輪になっています。
刀を正面に立て直し、鞘の下から三分の一の処へ、左手を手刀にして親指で鞘を挟むよう添えます。
そこから鐺へすっと撫で下ろし、下ろした親指と人差し指で鐺を摘まみ、左腰の刀を差す辺りへ持って行きます。

刀を差す帯の位置には古傳にも記述があり、
「大小指違之事 大小指違と云は世人脇指を帯二重に差 刀を三重にさすなり 居合の方にては二重に刀を指し三重に脇を差す也(以下略)」
つまり一般的には三重に巻いた帯の内側から一巻目と二巻目の間に脇指、その外側(内側から二巻目と三巻目の間)に刀を差すが、居合ではその逆で脇指が外側になる、という事を云っています。
この大小指違之事には英信流の抜付に関わる武的理合があるのですが、現代の居合では脇指は差さない為、ここでは割愛します。

左手の親指で古傳同様、帯の一番内側と二周目の間に隙間を作り、鐺を差し込みます。
鐺を袴の脇空きから出し、下の袴紐の上を通し、閂差しに差します。
左手は帯に添えたまま、右手で差せるところまで鞘を帯へ差し込みます。
左手で鞘を握り親指を鍔に掛け、右手は下緒を持ったまま柄頭に、親指を柄頭に上から被せて逆手に握り、差す深さ、角度を調整します。

差し込む深さは、正坐の姿勢から二の腕を動かさず、前腕を持ち上げて丁度鯉口を握る事が出来る程度に差します。
新陰流(制剛流)の居合などにみられる「前半差」ほどには出さず、一般的な武士の着こなしに近い差し様です。

差したのち、福井聖山師系統の当会では柄頭を臍前、我が体の中心に来るよう調整します。
戦前の差し方や土佐系統、神伝流などでは鍔が臍前に来るよう差す処も多くあります。
夫々に理合がある事であり、どちらが違うというものではありません。

左手を鞘に沿って後ろに撫でるように下緒を引き、下緒を腰後の鞘に上から掛けます。
掛け垂らした下緒の端を左手で摘み、左前に回して下の袴紐に差します。
この時初めて両手を刀から離し、両手で下緒を始末します。
八寸前後の長い下緒の場合は先二、三寸を折り、下の袴紐に上から挟みますが、五尺など短い場合は折らずに上から挟みます。

差した下げ緒の端を栗形の下辺りまで寄せ、左腰で下緒が輪となり、挟んだ下緒の先が輪の内側になるように始末します。

両の手を太腿に戻して姿勢を正し、気を落ち着けたら左手を鞘に掛け、必ず鍔に親指を掛けて、右足から立ち上がり、稽古に入ります。

また、稽古の終わりにはこの逆の順序で刀礼、神前の拝礼、師範への礼を行い終了とします。


无拍
2022年11月16日 初出
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